9月22日(火・祝)まで会期再延長!
画家が見たこども展の概要
ナビ派は、19世紀末パリで印象派に続く世代の芸術家グループです。彼らが追求したテーマの中から「子ども」に焦点をあて、都市生活や近代芸術と「子ども」との関係を探ります。
南仏ル・カネのボナール美術館の協力のもと、国内外の美術館および当館の所蔵品から、ボナール、ヴァロットン、ドニ、ヴュイヤールらナビ派を中心とした油彩・版画・素描・挿絵本・写真等約100点が展示されます。
ボナール美術館は、映画祭で有名なカンヌからほど近いル・カネに2011年にオープンしました。ピエール・ボナールは1926年、ここの地に居を構え最後の22年間を過ごしています。
ナビ派とその画家たち
ナビ派は、ゴーキャンが指導した1点の絵画から
ナビ派は、1890-1900年頃パリで活動したポスト印象派のグループのひとつです。
誕生のきっかけとなったのは、1888年にパリのアカデミー・ジュリアン(私立美術学校)の学生監を務めていた画家ポール・セリュジエ(1864-1927)が、フランス北西部ブルターニュのポン=タヴァンを訪れたことによります。
そこで、ゴーギャンの指導をもとに描いた《タリスマン(護符)》は、写実から離れた革新的な表現であり、アカデミー・ジュリアンの仲間たちを魅了しました。
ポール・セリュジエ《タリスマン(護符)》1888年 ※展示はありません
翌1889年に、セリュジエ同様にゴーギャンを慕いポン=タヴァンを訪れ活動した画家たちのグループを、ポン=タヴァン派と呼びます。
ナビ派はポン=タヴァン派のセリュジエを中心に、パリのアカデミー・ジュリアンに通う若い画家たちによって結成されました。ナビはヘブライ語で預言者を意味します。
代表的な画家はポール・セリュジエのほか、ピエール・ボナール、エドゥアール・ヴュイヤール、モーリス・ドニ、ポール・ランソンら。その後アカデミー・ジュリアンの外から、アリステッド・マイヨール、フェリックス・バロットンらが加わりました。
絵画作品に留まらず、ポスター・デザイン、テキスタイル、装丁、舞台美術なファイン・アート以外のものも手掛けました。
ナビ派は、ポスト印象派と20世紀前衛芸術をつなぐ存在と考えられています。
ナビ派の画家たち
ピエール・ボナール
ピエール・ボナール《自画像》1889年 ※展示はありません
ピエール・ボナール(1867-1947)はフランスの画家です。
パリ郊外南西部、フォントネー=オー=ローズに生まれました。1887年にパリ大学の法学部で学び、1888年に弁護士として勤め始めました。
しかし、1889年に画家を目指し、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学しましたが、奨学金が取れずアカデミー・ジュリアンに転校しました。そこで、ポール・セリュジエやモーリス・ドニと出会い、後にナビ派を結成します。
1890年に、エコール・デ・ボザールで開催された日本美術展を見て感銘を受け、以後の作品には日本絵画の影響が認められるようになります。
ボナールは、ナビ派の中でも最もジャポニスムの影響を強く受け、ナビ・ジャポナール(日本かぶれのナビ)と呼ばれました。
1893年に、後にボナールの妻となる女性、マリア・ブールサン(通称マルト)と出会います。これ以降の作品に描かれる女性の多くは、マルトをモデルにしています。
1925年に、南仏ル・カネに移り、庭の風景、室内情景、静物などの身近な題材を描きました。
エドゥアール・ヴュイヤール
エドゥアール・ヴュイヤール《自画像》1889年 ※展示はありません
エドゥアール・ヴュイヤール(1868-1940)はフランスの画家です。
フランス東部キュイゾーに生まれました。1878年に家族と共にパリへ移住します。1888年にエコール・デ・ボザールに入学しますが、しばらくしてアカデミー・ジュリアンへと移りました。
1890年に、ピエール・ボナール、ポール・セリュジエと知り合い、ナビ派のメンバーになります。
ヴュイヤールは独身で、60歳までドレスメーカーだった母親と暮らしていたこともあり、室内空間や家庭空間に精通していました。
物語性のあまりない日常の生活空間を画題とする作品を多く手がけ、ピエール・ボナールと共にアンティミスト(親密派)と呼ばれています。
晩年の1937年には、パリのシャイヨー宮の室内装飾を担当しています。日本美術に影響を受け、日本風と西洋絵画を融合した屏風絵なども多く描きました。
モーリス・ドニ
モーリス・ドニ《プリウレ前の自画像》1921年 ※展示はありません
モーリス・ドニ(1870-1943)はフランスの画家、著述家です。
フランス・ノルマンディー地方の海岸都市グランヴィルで生まれました。
1888年に、アカデミー・ジュリアンでポール・セリュジエ、ピエール・ボナール、フェリックス・ヴァロットンら、ナビ派のメンバーとなる仲間と出会います。
敬虔なカトリック教徒であったドニは、ボナールやヴュイヤールとは異なり、ジャポニスムよりも初期ルネサンスや新古典主義に強い影響を受けました。また、アール・ヌーヴォーとの類似性も指摘されています。
1890年に、芸術雑誌『芸術と批評(アール・エ・クリティック)』に論文「新古典主義の定義」を発表しました。
「絵画とは軍馬や裸婦、或いは何かの逸話である以前に、本質的には一定の秩序の上に集められた色彩で覆われる平面であることをまずは認識すべきである」と記しており、今日ではモダニズムの開始点のひとつと考えられています。
フェリックス・ヴァロットン
フェリックス・ヴァロットン《自画像 Mon Portrait》1897年 ※展示はありません
フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)は、スイス出身の画家、グラフィックアーティストです。
1865年に、スイス・レマン湖畔の都市ローザンヌに生まれました。
1882年に、ローザンヌ大学で古典研究の単位を取得しましたが、アカデミー・ジュリアンで学ぶためパリに移ります。
ナビ派の画家ピエール・ボナール、モーリス・ドニ、ケル・グザヴィエ・ルーセル、エドゥアール・ヴュイヤールたちと交流しました。ナビ派へ参加し「外人のナビ」と呼ばれるようになります。
1890年に、エコール・デ・ボザールで開催された日本版画展を見て影響を受けます。
1890年代に作った多くの木版画は新聞や本に掲載され、ヨーロッパだけではなくアメリカにまで渡り、版画を革新したと言われています。
また、パリで刊行された前衛的な月刊文芸誌『ラ・ルヴュ・ブランシュ』に掲載された木版画が大好評となります。
1900年に、フランスへ帰化しました。晩年になり静物画や、アトリエで記憶と想像から創作する風景画「合成風景画」に力を注ぎました。
画家が見たこども展の見どころはここ
「子ども」の誕生
1880年代以降の美術作品に表された子どもの姿は、この後ナビ派の画家たちによって描かれる新時代の子ども像とは微妙に異なっており、また時には深い共通点を示す作品群でした。
モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル《ブレのベルナールとロジェ》1933年
ポール・マティ《室内の子どもと女性》1890年頃
フィンセント・ファン・ゴッホ《マルセル・ルーランの肖像》1888年
路上の光景、散策する人々
ナビ派の画家たちは、都市を観察して作品を描きました。子どもたちの優しさと生命力、そして興奮と小悪魔性がその光景を豊かなものにしました。
ピエール・ボナール《乳母たちの散歩、辻馬車の列》1897年
エドゥアール・ヴュイアール《赤いスカーフの子ども》1891年
フェリックス・ヴァロットン《可愛い天使たち》1894年
一見すると無邪気な子どもたちに見えますが、よく観察すると群れをなす子どもの中央にいるのは警官と連行される貧しい身なりの男です。
都市の公園と家族の庭
遊ぶ子どもたちや、会話を楽しむ家政婦や女性たちで賑わう庭園の光景は、ナビ派が好んだテーマのひとつでした。
モーリス・ドニ《赤いエプロンドレスを着た子ども》1897年
家族の情景
ナビ派の画家たちは自分を取り巻く家族をテーマとして描き、子どものいる日常をおくる喜びを繰り返し描きました。
ピエール・ボナール《子どもたちの昼食》1897年
モーリス・ドニ《子ども部屋(二つの揺りかご)》1899年
モーリス・ドニ《入浴するノノ》1897年
モーリス・ドニ《サクランボを持つノエルの肖像》1899年
挿絵と物語、写真
ナビ派は子どものための作品として、塗り絵のアルバムや、楽譜の挿画や挿絵本も手掛けています。また、カメラを使用し、子どもたちの姿など人生の幸福な様子を記憶しました。
ピエール・ボナール《感情のアルファベット:友愛のA》1933年
ピエール・ボナール《ヴュイヤールとルネ》1900年
永遠の子ども時代
ボナールは、1947年に南仏ル・カネで作品を描き続け79歳の生を閉じました。児童画を思わせる自由闊達な作品は、ボナールが関心を持ち続けた子どもの世界の到達点と思われます。
ピエール・ボナール《雄牛と子ども》1946年
画家が見たこども展の音声ガイドは内田雄馬さん
音声ガイドは声優の内田雄馬(うちだゆうま)さんです。
「絵を見ることによって、描かれた時代に入り込むことができる。それって、すごいことですよね。」と内田さん。
貸出料金 = お一人様1台600円(税込み)
画家が見たこども展のインスタ映えスポットはここ
美術館中庭口(入口)
美術館北側
美術館南口
3階展示室にはヴァロットン《可愛い天使たち》の撮影用セットが組まれていました。この作品を含むヴァロットンの一連の木版画は撮影できました。
併設するCafé 1894(かふぇいちはちきゅうよん)には、モーリス・ドニ《サクランボを持つノエルの肖像》のバナーが飾られています。
画家が見たこども展の混雑状況はここをみる
指定の時間枠の最初は混みあいますが、普段よりゆったりと観覧することができます。
混雑状況は、美術館や展覧会のツイッターに掲載されます。
災害などによる臨時休館や、イベント情報などリアルタイムで分かります。
三菱一号館美術館の公式アカウント
画家が見たこども展のグッズがかわいすぎる
画家が見たこども展の図録はここがすごい
表紙はエドゥアール・ヴュイアール《赤いスカーフの子ども》、裏表紙はピエール・ボナール《家庭の情景》です。タイトル文字には、透明な盛り上がりを見せるバーコ印刷が使われています。
見返し(表紙の裏)はフェリックス・ヴァロットン《可愛い天使たち》が、青を背景に人物だけ切り抜かれて置かれています。
ヴァロットンは他にも目次や扉など要所に散りばめられていて、図録は絵本のようにも思えます。切り抜かれた人物から元になる作品を探してみるのも楽しいかもしれません。目次左ページ右上の犬に追われている人は《群衆-パリの野次馬たち》からです。
目次の黄土色は紙の色です。扉は円で切り抜かれており各章のナンバーが覗きます。
A4に近いサイズですが、多くは1ページに1作品を掲載しているので、ゆったり楽しく見ることができます。
ハードカバー/215mm×256mm/カラー/216ページ
価格=2,300円(税込み)
画家が見たこども展のチケットはいくら?
一般 1,700円/ 学生 1,000円/ 手帳 850円/ 手帳ご同伴 0円
・学生券をお求めの方は、当日入館時に必ず学生証等、学生を証明できる書類をお持ちの上、スタッフにご提示ください。
・障碍者手帳券をご購入の方は、当日入館時に必ず障碍者手帳をお持ちの上、スタッフにご提示ください。
なお、ご同伴の方は1名様まで無料となりますが、その場合お客様と同じ時間を指定の上、手帳ご同伴の方用日時指定券(ゼロ円券になります)を必ず入手し、ご一緒にご入館してください。
※指定した時間に万が一間に合わなかった場合
・当日中であればご入館いただけます。
・当日中のご入館が困難の場合、ご購入いただいた日時指定鑑賞券は無効になってしまいますのでご注意ください。
ネット環境をお持ちでない方へ
日時指定予約なしに当日直接お越し頂けるご入場枠を毎時、随時ご照会いたしますお越しいただいた時間帯の空いている枠でご入場いただくことになります。
人数の上限に達した場合はご入場いただけません。
なお、日時指定予約をされた方が優先となりますので、ご入場までお待ちいただく場合もございます。
私は当日事前予約なしで、14:00からの枠を14:10に入れてもらいました。
画家が見たこども展の会場・巡回先はここ
三菱一号館美術館
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間
10:00~18:00
※祝日・振替休日除く金曜、第2水曜、展覧会会期中の最終週平日は21:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
※臨時の時間変更の場合あり
休館日
毎週月曜(祝日・振替休日、6/29、7/27、8/31は開館)
年末、元旦、展示替え期間
※臨時の開館・休館の場合あり
アクセス
○電車でお越しの方
JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分
東京メトロ千代田線「二重橋前〈丸の内〉」駅(1番出口)徒歩3分
東京メトロ有楽町線「有楽町」駅(D3/D5出口)徒歩6分
都営三田線「日比谷」駅(B7出口)徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線「東京」駅(改札口・地下道直結)徒歩6分
○バスでお越しの方
最寄の停留所は「東京国際フォーラム前」です。三菱一号館美術館の正面に停まります。
都営バス
都04(豊海水産埠頭~東京駅丸の内南口)
都05(東京ビッグサイト~東京駅丸の内南口)
都05(深川車庫前~東京駅丸の内南口)
東急バス
東98(等々力操車所~東京駅南口)
※詳細は東急バスホームページをご参照ください。
○羽田空港よりお越しの方
東京モノレール→約25分→「浜松町」駅(JRに乗り換え)→約6分→「東京」駅
京浜急行→約21分→「品川」駅(JRに乗り換え)約11分→「東京」駅
○成田空港よりお越しの方
JR成田エクスプレス→約62分→「東京」駅
京成スカイライナー→約58分→「日暮里」駅(JRに乗り換え)
→約11分→「東京」駅
○車でお越しの方
最寄高速道路出口は「都心環状線丸の内出口」です。
※当館専用の駐車場はございません。
※駐車場は、丸の内エリア共通サービスで便利でお得な丸の内パークインをご利用ください。
お問い合わせ先
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